宅地建物取引業(以下「宅建業」)は、不動産取引の公正性や円滑性を確保するため、法律による厳格な規制が設けられています。その中でも、宅地建物取引業法施行令第二条(以下「政令第二条」)における「使用人」に関する規定は、宅建業を適正に運営する上で重要な役割を果たします。
宅建業者で営業所が複数ある場合に支店長を政令使用人にします。また、代表取締役が複数の会社で代表をしていたり、本店に勤務できなかったりする場合に、政令使用人を設置するように役所から指示されることがあります。ただいきなり言われても、ピンとこない方も多いと思います。そこで、本記事では、政令第二条に定められた「使用人」について、その要件、役割、関連する法的義務について詳細に解説します。
「使用人」の定義と要件
政令第二条の使用人の定義
政令第二条では、宅建業者の「使用人」について規定しています。この「使用人」とは、単なる従業員を指すのではなく、宅建業における業務を実質的に管理する立場にある者を指します。具体的には、「政令使用人」とも呼ばれ、営業所や事務所において、宅建業の実務を統括する責任者の役割を担うことになります。
政令第二条の使用人の要件
「政令使用人」として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
1.宅建業者の役員またはその営業所・事務所の代表者であること
- 企業の経営陣に属する者、または宅建業の業務を統括する責任者であることが求められる。
- 例えば、本社の営業本部長や支店長などが該当する。
2.宅建業に関する業務の実質的な管理者であること
- 事務所や営業所の業務を統括し、管理する立場にあること。
- 一般の従業員や宅地建物取引士(宅建士)ではなく、業務の責任者として判断や指揮命令を行う立場である必要がある。
3.取引に関する責任を負う立場であること
- 顧客との取引や契約に関する最終的な判断を下す権限を持っている。
- 宅建士は取引の重要事項を説明する役割を担うが、「使用人」はより広範な責任を負う。
業務停止処分を受けていないこと
- 宅建業法に違反して業務停止処分を受けた者は、その期間中は「使用人」になることができない。
「政令使用人」の役割と義務
宅建業の実務において、「使用人」は重要な役割を果たします。主に以下の点で責任を担います。
1. 営業所の管理・運営
営業所において宅建業の適正な運営を管理し、従業員の業務を指導・監督する役割を果たします。具体的には以下のような業務があります。
- 取引の適正性の確保
- 顧客対応・クレーム対応
- 法令遵守の確認
- 宅建士の業務管理
2. 宅建業法に基づく責任
「政令使用人」は、宅建業法に基づくさまざまな責務を負います。以下の点が特に重要です。
- 重要事項の説明を適切に行わせること:宅建士が重要事項説明を適切に行うよう管理する。
- 取引に関する最終的な判断と責任:宅建業者としての取引が適正に行われているか判断し、問題があれば適切に対応する。
- 法令遵守のための指導:営業所内の従業員が宅建業法を遵守するよう教育・指導を行う。
- 免許に関する事項の管理:宅建業者の免許更新や変更届出など、行政手続きに関する業務を担う。
3. 行政処分の影響
「政令使用人」は宅建業者としての業務を管理する立場にあるため、その責任は重大です。万が一、不正な取引や法令違反があった場合、「政令使用人」にも処分が下される可能性があります。
- 違反があった場合、業務停止命令や免許取消処分を受けることがある。
- 「使用人」として不適格と判断された場合、宅建業の業務を行うことができなくなる。
「政令使用人」と宅建士の違い
宅建業法において、「使用人」と「宅建士」は異なる役割を持ちます。それぞれの違いを以下に整理します。
項目 | 使用人(政令第二条) | 宅建士(宅地建物取引士) |
---|---|---|
役割 | 営業所の実務を統括する管理者 | 重要事項説明・契約書の交付等 |
資格の要否 | 資格不要(ただし管理責任あり) | 国家資格(宅建試験合格者) |
業務範囲 | 営業所全体の運営・管理 | 重要事項説明・契約締結補助 |
行政処分の影響 | 免許取消・業務停止の可能性 | 宅建士登録の抹消など |
このように、「政令使用人」は経営的な立場から宅建業全体を管理し、「宅建士」は取引における専門家としての役割を担うことになります。
まとめ
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