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代表者が外国人で日本に不在の場合の宅建業免許取得について

外国人が日本で事業を行うケースは年々増加しており、不動産業も例外ではありません。特に宅地建物取引業、いわゆる「宅建業」の免許を取得して、日本国内で不動産売買や賃貸仲介を行いたいというニーズは増加傾向にあります。弊事務所でも多数のお問い合わせをいただいており、実際に宅建業免許申請の手続きを行ってきました。

ただし、代表者が外国人で、なおかつ日本に不在(海外在住)の場合、宅建業免許の申請は日本人だけの会社とは異なる点が出てきます。いくつかの条件や準備すべき書類、体制づくりが求められます。

そこで、ここでは、代表者が外国籍かつ日本に不在である場合の宅建業免許取得について、詳しく解説していきます。

宅建業免許の基本要件とは?

まず、宅建業免許を取得するにあたり、法人として満たさなければならない基本的な要件があります。代表者が外国人であっても、法人が日本国内に拠点を持ち、以下の条件を整えれば申請自体は可能です。

事務所の設置

  • 宅建業を行うには、物理的な「事務所」が必要です。
  • バーチャルオフィスや郵便受け程度の場所では不可です。

専任の宅地建物取引士の配置

  • 常勤の専任宅建士を配置し、その者が他の業務に従事していないことが要件となります。

政令使用人の設置(後述)

詳細は後述しますが、政令使用人の設置が重要になります。

欠格要件に該当しないこと

  • 破産者、刑事罰歴のある者等は免許取得ができません。

    代表者が海外在住の場合の特別な対応:政令使用人の選任

    代表者が海外に住んでおり、日本に常駐できない場合、宅建業免許の申請・運営にあたって最も重要な役割を果たすのが「政令使用人(せいれいしようにん)」です。

    政令使用人とは?

    政令使用人とは、法人の代表者に代わり、宅建業の業務を実質的に統括・管理する日本国内の責任者です。宅建業法第5条に基づき、法人が日本国内に事務所を構える場合、その事務所ごとに政令使用人を選任する必要があります。

    政令使用人には以下の要件があります:

    • 日本国内に居住していること
    • 当該事務所に常勤していること(宅建業の責任者となります)
    • 欠格事由に該当していないこと

    政令使用人は、法人の代表者と同様に法的責任を負う立場にあります。宅建業に関する実務経験や一定の業務管理能力を有していることが望ましいので適切な人選をする必要があります。

    外国人代表者が提出すべき書類と注

    外国籍かつ日本国外に在住している代表者が宅建業免許を申請する場合、日本人代表者と比べて追加で用意すべき書類や手続きがいくつか存在します。

    サイン証明書

    保証協会に加入の際に代表者が保証人となり印鑑証明を添付します。印鑑登録がない外国籍の代表者の場合、代替として「サイン証明書」が必要になることがあります。これは日本大使館や領事館などの在外公館で取得できます。

    パスポートのコピー

    身元確認のため、パスポートの顔写真ページが必要になることがあります。

    略歴書・履歴書

    宅建業免許の審査では、代表者の経歴についても確認されるため、日本語で履歴書を提出します。

    滞在資格(必要に応じて)

    日本に一時的に入国して営業活動を行う場合、「短期滞在」や「経営・管理」などの適切なビザが必要です。宅建業免許の取得が、経営・管理ビザの取得材料となるケースもあります。

    外国人代表者が宅建業免許を取得する際の流れ

    以下は、外国人代表者が日本に不在のまま宅建業免許を取得する際の一般的なステップです。

    日本法人の設立

    • 株式会社などの法人を設立し、登記上の代表者として外国人が就任。
    • 同時に、日本国内に営業拠点(事務所)を準備。

    政令使用人の選任

    • 日本在住で実務を任せられる者を政令使用人に選任。
    • 取締役や執行役員等の地位に就ける場合もあります。

    専任の宅地建物取引士の確保

    • 事務所ごとに専任の宅建士を配置。
    • 宅建士証のコピー等を添付し、専任性を示す書類も必要。

    必要書類の準備

    • 法人登記簿謄本、定款、事務所の賃貸契約書など。
    • 代表者の誓約書・サイン証明・履歴書・パスポート等も併せて提出。

    都道府県(または指定都市)への申請

    • 営業所所在地の自治体へ提出。
    • 審査期間は約30〜60日。修正指導や追加書類の提出がある場合も。

    免許証の交付と営業開始

    • 免許交付後は、宅建業者票、報酬額表の掲示や保証協会加入手続き等を行い、営業開始となります。

      よくある誤解とリスク

      • 「バーチャルオフィスでもOK」→NGです。
        →物理的な事務所空間が必要で、独立したスペースであることが求められます。
      • 「外国人でも政令使用人になれる」→なれますが、日本在住であることが前提
        →また、「技術・人文知識・国際業務」等の適切な在留資格を持っている必要があります。
      • 「宅建士は海外からリモートでもいい?」→不可です。
        →専任の宅建士は、常勤で事務所に勤務することが必須です。
      • 「在留資格がなくても開業できる」→不適切です。
        →法人代表者が日本で活動するには、適切な在留資格が必要になります。

      実務上のポイントと専門家活用のすすめ

      代表者が日本にいない場合、免許申請手続きや事後対応を日本側で担える体制が不可欠です。政令使用人の責任は大きく、宅建業法違反があれば罰則対象となるため、信頼できる人物の選任が必要です。

      また、外国人向けのビザ申請や定款作成、登記書類作成など、多くの書類が正確な日本語で求められます。こうした手続きを円滑に進めるためにも、行政書士などの専門家に相談することが強く推奨されます。

      日本に不在の外国人が代表者の宅建業免許申請についてまとめ

      ポイント

      • 代表者が外国人で日本不在でも宅建業免許取得は可能
      • 日本国内に物理的な「事務所」が必要
      • 代表者の代わりに「政令使用人」を日本在住者から選任
      • 専任の宅地建物取引士も日本国内で常勤が必要
      • サイン証明書やパスポートなど外国人特有の書類が必要
      • 事務所要件や欠格事由に注意
      • ビザ(在留資格)との関係にも配慮
      • 行政書士等の専門家に相談するのが安全でスムーズ

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