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宅建業者で専任の宅地建物取引士がいなくなった場合の手続きとリスクについて知りたい

宅地建物取引業(以下、宅建業)を営む事業者は、事務所ごとに一定数の専任の宅地建物取引士(以下、専任取引士)を設置することが宅地建物取引業法(以下、宅建業法)により義務付けられています。しかし、何らかの理由で専任取引士が不在となった場合、事業者は速やかに必要な手続きを行わなければなりません。本稿では、専任取引士がいなくなった場合の具体的な手続きおよび生じうるリスクについて詳しく解説します。

専任取引士が不在となった場合の手続き

1. 速やかな補充義務

宅建業法第31条の3により、宅建業者は事務所ごとに、業務に従事する者5名につき1名以上の専任取引士を配置しなければなりません。そのため、専任取引士が退職・転職・死亡などにより不在となった場合は、すぐに新たな専任取引士を選任し、適切な手続きを行う必要があります。

2. 変更の届出

専任取引士がいなくなった場合、宅建業者は以下の手続きを行う必要があります。

不在となった事実の報告

専任取引士が退職・転職・死亡等で不在になった場合、遅滞なく宅建業者の所在地を管轄する都道府県または国土交通大臣(免許の種類による)に報告する。

新たな専任取引士の選任

  • 新たに専任取引士を確保し、その資格を確認する。
  • 既存の従業員が宅建士の資格を有している場合、その者を専任取引士に任命することも可能。

変更の届出の提出

  • 宅建業法に基づき、専任取引士の変更が生じた場合は、変更があった日から2週間以内に補充し、30日以内に変更の届出を行う必要がある。
  • 提出先は免許を受けた行政機関(都道府県または国土交通省)となる。
  • 必要書類として、新たな専任取引士の資格証明書、雇用契約書などが求められる。

専任取引士が不在となるリスク

1. 行政処分のリスク

宅建業者が専任取引士を適切に配置していない場合、宅建業法違反として行政処分を受ける可能性があります。

  • 指導・勧:行政機関から改善を求められる。
  • 業務停止処分:長期間専任取引士を確保しない場合、一定期間の業務停止を命じられることがある。
  • 免許取消し:悪質な場合、最終的に宅建業の免許が取り消されることもある。

2. 取引の停止・信用失墜

宅建業者として有効な専任取引士がいない場合、取引を適法に行うことができません。その結果、

  • 契約締結や重要事項説明の実施ができず、業務の遂行が困難となる。
  • 顧客や取引先からの信用を失い、企業としての評価が下がる。
  • 取引金融機関との関係にも影響し、融資の審査に悪影響を及ぼすことがある。

3. 法的責任の発生

宅建業者が専任取引士不在のまま業務を継続した場合、以下のような法的責任が発生する可能性があります。

  • 業務の適法性が疑われる:専任取引士の不在により、重要事項説明などの法的義務が適切に履行されていないと見なされる可能性がある。
  • 消費者からの訴訟リスク:取引の有効性が争われ、トラブルに発展する可能性がある。

4. 社内業務の混乱

専任取引士が不在となることで、社内の業務にも支障をきたします。

  • 法令順守の管理が不十分になり、コンプライアンスリスクが増大する。
  • 事務作業の遅れが発生し、業務効率が低下する。
  • 他の従業員の負担が増え、労働環境の悪化を招く可能性がある。

予防策と対応策

不測の事態による専任の宅建取引士がいなくなってしまうことを防ぐために以下のような予防、対策を立てておくといいでしょう。

1. 専任取引士の確保

  • 社長か取締役が宅地建物取引士の試験に合格する
  • 複数名の宅建士を雇用する
  • 社内資格取得の促進
  • 外部との連携

2. 早期の手続き実施

  • 早期の後任選定
  • 速やかな届出

まとめ

宅建業者で専任の宅地建物取引士がいなくなった場合の手続きとリスク

  • 専任取引士が不在となった場合、宅建業者は速やかに補充しなければならない。
  • 変更があった場合は、30日以内に届出を行う必要がある。
  • 専任取引士不在のまま業務を続けると、行政処分(業務停止・免許取消し)のリスクがある。
  • 契約業務の遂行が困難となり、顧客や取引先からの信用を失う可能性がある。
  • 法的責任が発生し、消費者から訴訟を起こされるリスクもある。
  • 事務作業の遅延や従業員の負担増加など、社内業務にも悪影響を及ぼす。
  • 予防策として、宅建士資格を持つ社員を複数名雇用し、社内教育を充実させることが重要。
  • 早期の後任選定と速やかな届出を徹底することで、リスクを最小限に抑えることができる。

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